南三陸珍道中レポート

遠井地下道&The MG’s 2018年5月13日(日)『月と昴と森の愉快な仲間たち』at 南三陸町さんさん商店街内『月と昴』

TEXT:遠藤妙子

遠井地下道&The MG’sとは、ロリータ18号のマサヨ、JUNIORのGo!、そしてBUDDY TANDENの遠井地下道が、全国津々浦々を行脚するため結成したアコースティック・ユニット。3人が南三陸の「月と昴」でライヴをやる!まちゃまちゃも参加!コレはついて行くしかない!と同行させてもらった私、ライターの遠藤。実は私、月と昴のトモちゃんとは、東日本大震災後にソウル・フラワーみちのく旅団で東北に行った時に出会い、久しぶりの再会。この繋がりがとても嬉しい。

月と昴でのライヴは5月13日。前日、Go!ちゃんとまちゃまちゃさんと高円寺から珍道中はスタート。アレ?人が足りないぞ。遠井地下道(この旅でトモちゃんが地下さんと命名。この旅のレポートだけ、地下さんと書かせてもらいます)はこの日は吉祥寺でライヴのため、当日に現地で合流。そしてマサヨさんはロリータ18号が仙台でライヴのため、既にロリータ号で出発。そう、月と昴でのライヴの前に、ロリータ18号のライヴを見るのだ!

車は一路仙台へ。ではなかった。「ちょっと途中下車して行こう」とGo!ちゃん。Go!ちゃんが南三陸に向かう途中、必ずと言っていいほど寄る場所。福島の富岡町~双葉町~大熊町~浪江町。帰還困難区域もある地域だ。瓦礫があるわけではない。街並みは震災前と変わっていないようにも見える。だけど、だからこそ、時が止まっているようだ。閑散として人通りは少ない。でも人の営みはある。オープン間近の居酒屋がある。どっこい生きてる人々がいる。車を降りて歩く。この町の地面を踏みしめる。この地のことを、思い続けなければいけない。

そして再び仙台へ。ライヴ会場のバードランドに到着。いい感じの箱。ライヴの前に腹ごしらえに入った居酒屋はとても美味しかったけど、時間ギリギリ、最後に頼んだうどんをかっ込み、慌ててバードランドへ。

この日はワンマン並みのヴォリュームのロリータ18号。思い切りのいい演奏にグイグイ迫るマサヨさんのヴォーカル。ハッピーでぶっ飛んでて、それだけじゃなくパンクの背骨がビシッと通ってる感じのライヴ。マサヨさんの歌は切実で感情を出し切り、だからこそ突き抜けていけるのだ。痛快で濃密な約2時間。本当にカッコイイ。ライブ後、ロリータの3人は東京へと帰り、マサヨさんと共に本日の宿へ。さぁ、次は南三陸だ。

翌日、月と昴へ向かう前に、歌津のお祭り、「ハマーレ歌津しろうお祭」へ。地元の様々な店が並ぶ。食べ物全部美味しい。熱々の焼き魚を頂いていたら、なんと白いピカピカなおにぎりまで持ってきてくださった。米が旨い!「ここのブティック、いいですよ~!」とまちゃまちゃ。おばちゃん御用達(自分もおばちゃんだけど)のブティックは、確かに掘り出し物がザクザク出てきて3着購入。地元のおじさんバンドにジーンとしつつ、そろそろ月と昴へ向かわなきゃって時に、地下さんが新幹線に乗り遅れたとの連絡。大丈夫か?

月と昴のあるさんさん商店街は、オープンから1年目のまさに新しい町。志津川湾を臨む約30店舗の商店街は賑わい華やか。ソフトクリームを買う人の列、月と昴だ。照れたような顔で迎えてくれるトモちゃん。赤い壁がロック。ひとときのお喋りの後、準備に入る。マサヨさんはイヤホンで曲の確認。真剣な表情。すると「遅れました~」と地下さんが友達と登場。途中、福島から車に乗せてもらったとのこと。いい友達持ってるね。機材を運び入れチェックする地元のカズトくん。対バンのSHOT GUNも到着。なんと昨日、ロリータで最前でノリノリだった人達だ。リハを終え、どんどん人が集まってくる。

いよいよスタート。照れるトモちゃんを真ん中に、Go!ちゃんとまちゃまちゃの3人で挨拶。乾杯。トップに登場したのは赤みがかった金髪に革ジャンのパンク・シンガー、中年ナイーブ。中年の切なさ全開のMCに笑い、ラモーンズを中心にパンクナンバーをアコギをかき鳴らし歌う。哀愁と必死さと痛快さがグシャグシャに混ざり合い、それでいて真っ直ぐに向かってくる。大汗かいても革ジャンは脱がない。ラモーンズならマサヨさんも登場。革ジャンの2人、たまらんかった。

次はSHOT GUN。普段はきっと爆音でライヴをやっていそうだけど、ここではアコースティック編成。昨夜、ロリータで暴れまくってたヴォーカリストは意外にも深みのある声。見た目の雰囲気で酒飲みブルースっぽいかと思ったけど、音楽を大切にしている感じ、大切なものをしっかり届けたいという感じ。ほのぼのしつつキリリとしていた。

そしてまちゃまちゃ。大笑いさせつつ本質を突くような鋭さはサスガ!そしてどこか優しさがある。まちゃまちゃのトークはグングンと元気にしてくれる。

大声援に迎えられ、いよいよ遠井地下道&The MG’s。好きな歌だけをやるこのユニット、一曲目は忌野清志郎の「JUMP」。デカいグルーヴで観客も勿論、ジャンプ!グレイトリッチーズの「時速4キロの旅」は、宝物を見せるように奏で、歌う。Go!ちゃんのヴォーカル、グッとくる。ボ・ガンボスの「トンネル抜けて」は、ちょっとテンポが速めで地下さんの声も豪快で爽快。マサヨさん自ら歌うロリータ18号の「生活」。リアルな歌詞とリアルな声。アコースティックならではの迫力。遠井地下道の「365日」は初めて聞いたのだがいい曲じゃないか!JUNIORの「カーニバル」はマサヨさんがメインで歌う。笛の音がいいね。そして、「どうしても歌いたい曲」とGo!ちゃん。ONE TRACK MINDの「ナターシャ」が始まる。2012年のクリスマスに逝去したワントラのBAGIは、東日本大震災後、自分達のやり方で東北を支援しようと立ち上げられた「烏合の衆」の創設メンバーである。大らかなラブソングのような「ナターシャ」だけど、その歌詞が響く、泣ける。歌い演奏する3人は、BAGIさんをここに連れてきてくれたんだ。「ちゃんと歌えよ」とか言いながら、ここで笑ってる。たぶん、お客さん、それぞれに、ここにいてほしい人が、きっとここにいただろう。まちゃまちゃも登場し「クズんなってGO」、「デイドリームビリーバー」。もう大合唱。最後はやっぱりこの曲、「新しい町」!みんな立ち上がる。立ち上がってステージに立つ。歌い、踊る、笑う。ここは本当に新しい町だ。最高だ!

最後、Go!ちゃんが「応援とか支援とかで来るのはやめました。遊びに来ました!」。大拍手、大声援。誤解されるかもしれないその言葉がこんなに歓迎されるのは、Go!ちゃんを筆頭に、烏合の衆と南三陸の仲間が築いてきた友情があるからだ。ちょっと臭い言い方だけど、きっとそれが真実。

ライヴが終わっても、みんなの語らいは続いていた。

翌日。南三陸の仲間が漁師の仲間を紹介してくれて海へ出た。牡蠣の養殖を見せてもらい、新鮮な牡蠣を山ほどご馳走になった。さんさん商店街に戻り写真家のJUNさんと、津波で鉄骨だけが露わになった防災庁舎、盛土された川沿いを眺めながら、震災前と震災後の話を伺った。

出会った人達、見た景色、そして勿論、ライヴ。全てが最高だった。「南三陸のさんさん商店街っていいよ~。月と昴って店はいいライヴもやってるよ~。みんな一度、行ってみたらいいよ」。そんなことをすぐに誰かに、みんなに伝えたくなった。