Go!&トモちゃん対談

Go!(東北援護射撃『烏合の衆』/JUNIOR/遠井地下道&The MG’s)&トモちゃん(内田智貴/コーヒ&カレーの店『月と昴』店主)対談

interviewer:遠藤妙子

ここでカルチャーが生まれてるなって、そう思いました。昨日のライヴで。

ロリータ18号のマサヨ、JUNIORのGo!、BUDDY TANDENの遠井地下道からなる遠井地下道&The MG’s。アコースティックで各地を廻る3人と、仲間でスペシャルゲストのまちゃまちゃが、南三陸のトモちゃんの店「月と昴」で待望のライヴを開催した。地元のバンドSHOT GUN、謎のパンク・シンガー中年ナイーブも出演。笑いもありつつしっかりと自身の音楽を表現した熱いライヴを披露。まちゃまちゃの冴えたトークに爆笑。遠井地下道&The MG’sも本気で楽しませたい、いや、楽しませたいではなく、みんなで一丸となって楽しみたい、そんなライヴで、実際、本当に楽しく、熱く、笑いながら涙が出そうになった。月の昴に居た人みんな、素晴らしい時間を共にした夜だった。
実はこのライヴ、挑戦もあった。被災地でのイベントは無料の場合もあるが、この日は有料。なぜそこにこだわったのか?トモちゃんとGo!の思いは?
トモちゃんとGo!。友達っていいなぁ。そして誰でも友達になれるのだ。相手のことを思いやれば。東日本大震災から7年以上経った今こそ、この対談を読んでもらいたい。

何度も率先して来てくれてる人達と、今度はこっちが率先して、一丸となってやりたいんですよね。

——昨日のライヴ、凄く楽しかったです!
Go!「楽しかったねー」
トモちゃん「なかなかないですよ、笑いあり涙ありみたいなの」
Go!「俺らが東京でやってることを持ってこれたなって」
——昨日のGo!ちゃんはMCで、「応援じゃなく遊びに来た」ってことを言ってましたよね。グッときたんだけど、その思いを聞かせて。
Go!「勿論、南三陸に来るようになったのは『応援しよう』って思ったからだし、烏合の衆を始めた時もそういう思いだったし。今もその気持ちは心の真ん中にあるんだけど、今は支援しに行くとか応援しに行くって感覚ではなくなってきたかな」
——友達のとこに遊びに行くって感覚で。
Go!「そういうこと!友達がいるから遊びに行くって感覚。で、今年は毎年5月に開催していたホープフェス(※1)が出来なくなったんですね。ホープフェスに関わってる自分としては、毎年5月に行くもんだと思ってた南三陸に行く理由がなくなっちゃった。でも俺自身が行きたいから行く理由を作ろうと思ってトモちゃんに電話して、昨日のライヴが実現した感じですね」
——二人はすっかり意気投合してる感じだもんね。そうやって友達になった経緯と、Go!ちゃんが言ってた「東京でやってることを持ってこれた」ってなるまでの経緯や気持ちを聞きたい。まずトモちゃんにとってGo!ちゃんはどんな人?
トモちゃん「優しさですよね。笑顔をくれる人」
Go!「それはこっちも」
トモちゃん「でね、俺、思うのは、支援って形で来られると、相手側のエゴも入ってくるんですよ。こうやりたい、こういう報告をしたいっていう、エゴみたいなものを感じちゃう。でもね、震災以降いろんな人来たけど、ミュージシャンって優しいんですよ。中川(敬/ソウル・フラワー・ユニオン)さんもそうだしモモナシもそうだしリクオさんもそうだし西村(茂樹/ラウド・マシーン、西村組)さんもそうだしヒデ坊先輩(伊丹英子/ソウル・フラワー・モノノケ・サミット)もそうだし。損得勘定なしに一生懸命やってくれる。有名な人とかお金がかかってるイベントとかには、失礼な言い方だけど、売名行為みたいに感じるようなものもあったしね。でも俺が知ってるミュージシャンはそういうのが全然ない。やっぱり中川さんが繋げてくれたんだと思う。中川さんは『Go!君に会ったことないの?会ってみたらいい』って、ずっと言ってて」
Go!「中川さんが『トモちゃんに会ってみて』って俺にも電話くれた。そこから出会えたって感じだよね」
——中川君も何度も東北に行ってるけど、関西在住で距離があるし、ならばGo!ちゃんを紹介したいって思ったのは、損得勘定や売名行為とは逆の行動だもんね。
トモちゃん「下心がないですよね、ミュージシャンの人は。自分でお金出して来てくれるわけだし、ホントに自分が来たいから来てくれる。それは凄く感じます」
Go!「俺、九州だったり山陰だったり静岡だったり札幌だったり…いろんなところに同じような友達がいて。ライヴやって酒飲んで馬鹿な事喋ってっていう友達がいて、その中の一つに南三陸が加わったっていうだけ。今はそういう感覚。でもやっぱり、他の土地と同じことをやるにはまだまだ大変な現状ではあるんだろうけど…。でも友達のトモちゃんがこういう店をやってスペースを持っていて。だったら機材をどうにかすればライヴがやれるなって」
——しかもここには繋がりで、機材を準備できる人がいる。
Go!「今回は出演もしてくれたカズトくんという音楽が本当に大好きでホープフェスも一緒にやってる友達にお願いして。カズトくんは海っぺりにスタジオ的な秘密基地みたいなプレハブを建てて、音響機材や楽器をたくさん揃えて、夢は南三陸にスタジオを作る!っていうナイスガイで。去年来た時にその秘密基地で一緒にデッカい音でセッションしたりしてね。そんなカズトくんにお願いしたら即答で『楽しそうなんで一緒に混ぜてください!』って言ってくれて機材一式を用意してくれました!」
トモちゃん「昨日のライヴはGo!さんあっての繋がりですよ。店に来たことない人も見に来てくれて。それはGo!さんが南三陸でホープフェスを盛り立ててくれてるからで。Go!さんを知ってるから、Go!さんのライヴを見たいからって人も、昨日は来てくれたし。だからモモナシやリクオさんや、リクオさんと中川さんがやってる『うたのありか』とは客層が全然違ったし」
——へー!ライヴによって客層が変わるっていうのは、被災地に来てくれるから見に行くっていうより、好きなものを見に行くっていう。なんか、新しいことが始まった感じがするな。
Go!「そうそう。良いか悪いかはわからないけど、そういう、ある意味では全国各地にあるライヴハウスやライブのできるカフェなんかと同じような感じになったなって」
トモちゃん「こっちとしても助かってます。また違うミュージシャンがここでライヴやるとして、『こんなライヴやってるんだ』って、お客さんが来てくれるかもしれない」
Go!「俺、月と昴のことは東京のバンド仲間にも話してて。トモちゃんが本設の商店街に移転する前に『アコースティックでライヴできるようにしたい』って言うのも聞いてて。そしたら呼びたい人、(ワタナベ)マモル君とかべー師匠(踊ろうマチルダ)とか三浦さん(夜のストレンジャーズ)とかT字路sとか…絶対ここでできるじゃないですか?俺が好きなバンドマン、友達のバンドマン、絶対、月と昴でやってほしいって思って。それはテレビに出てるような有名な人じゃなくていいんじゃないかな?って」
トモちゃん「むしろ有名な人じゃないほうがいい(笑)」
Go!「俺も半年に一回ぐらいここで何かしらイベントをできたらいいなってトモちゃんと話してて。そしたら南三陸の地元のガラの悪い奴らも(笑)、きっと楽しめるライヴもあったりして」
トモちゃん「南三陸は震災後、いろんな面が当然変わって。ミュージシャンとかいろんな人達が支えてくれて。ミュージシャンが来る街になったのはいいなって思ってます。で、やっぱり、何度も率先して来てくれてる人達と、今度はこっちが率先して、一丸となってやりたいんですよね」

演奏をしてお客さんが集って盛り上がれば次に繋がる。演奏するほうも下手な事はできない。だから練習もするし面白い一日にできるようなアイディアも出す。

——「東京でやってることを持ってこれた」ってことで、昨日はお客さんからチケット代をとった有料のライヴだったよね。
トモちゃん「俺は正直、復興って意味じゃ、7年経ってもこのザマですかっていうのはあるんですよね…。あの、なんかね、めんどくさいことがあるのね、商店街としての考えもあって。有料ならやってくれるなとか」
Go!「あぁ、そうだね」
トモちゃん「そういうのもあるんだけど、でもやっぱり商売だからね。ライヴを目指してくる人もいるわけでしょ。昨日のライヴ、中川さんやリクオさんのライヴ、モモナシのライヴだって、ライヴを、音楽を目指して来てくれる人がいる。そういうのも商店街は受け入れないんですか?って俺は言ったわけ。無料ライヴもそりゃいい面があるけど、俺が思う一丸となってっていうのは、そうじゃなくて。『そろそろいいんじゃね?』っていう」
Go!「今回は有料にするっていうのも悩みました。有料ならばもっと安い値段でも…、例えば1000円ぐらいでもいいかなって思ったけど、トモちゃんは今後の事を見据えて普通の値段設定でいいよって。そうトモちゃんに言われて、考えてみて、俺もそうだなって」
——有料にした分、自分達もここで飲んだり買い物したり遊んだりするっていう…。
Go!「それもあります。あと何より昨日嬉しかったのは、出演してくれた地元パンクバンドSHOT GUNや、急遽事情で一人で歌う事になってしまったけど、スゲエ良いライブをしてくれたさっきも紹介したカズト君(中年ナイーブ)にも出演料を払えたこと。最初、頑なに受け取らなかったんだけどね(笑)。カズト君は機材も用意してセッティングもしてくれたのにね。例えば高円寺界隈でこういうイベントをやって収益が出たらギャラを出すじゃないですか?なんとか説得して受け取ってくれたんですけど…(笑)。演奏をしてお客さんが集って盛り上がれば次に繋がる。演奏する方も下手な事はできない。だから練習もするし面白い一日にできるようなアイディアも出す。地元だからって当たり前に参加できるっていう感じにはしたくなくって。全国どこの箱でもミュージシャンでもそういう事はみんな一生懸命やってることなので、それが昨日はわずかでもできたのが一番の収穫。凄く嬉しかったっすね。そんな次のステップに動いていくタイミングなのかなぁ?って思ったので挑戦してみました」
——お客さんも、ホントに見たいって思って見に来た人が多かったですもんね。
Go!「でもまだ昨日は、トモちゃんの店だから、俺逹が来るからって見に来てくれた人もいるだろうけど、それも勿論嬉しい。でも段々、ライヴそのものを見たくて来るって人も増えてきたらいいな、増えてくるんじゃないかなって。ライヴから月と昴って店を知ったり、さんさん商店街のことを知ったりするわけだし。だからこれからも、高円寺辺りでイベントうつのと同じ感覚でやろうって。ただちょっと距離があるってだけでね」
トモちゃん「ま、俺なんかエゴの塊だけどね(笑)。自分が好きな音楽を聴きたい、好きなライヴを見たいってだけなんだから」
Go!「俺も!だって自分が好きな曲を演奏して、自分が楽しいからやってるんだもん」
——二人が意気投合したのは、音楽が好きってのが当然デカいよね。
Go!「それはデカかった。しかも好みの音楽も限りなく近かった。トモちゃんと出会って、まだどんな人かって全然知らない頃、今の月と昴の前にトモちゃんが仮設商店街でやってた時の月と昴に初めて行った時、店に入って挨拶しようとしたら、店内で流れてる音楽がいきなり踊ろうマチルダでびっくりした(笑)。もうバッチリでしょ(笑)。俺、みんなが喜ぶバンドを呼ぶってことより先に、自分が見せたい、見てもらいたい、絶対に楽しんでもらえる!っていうバンドってのを優先的に考えちゃうから。だからホープフェスの時もこの土地でロリータ18号を見てみて!ロス・ランチェロス、浅草ジンタを!ニューロティカを!踊ろうマチルダを!って思った。仲間にはまちゃまちゃも居るし、愉快なパンク道化師LOTOくんも居る!勿論、JUNIORもね!(笑)」
——それは東京で自分が企画する感覚と一緒で。
Go!「そうそう。でも勿論、そこは地元のみんなと考えながらっていうのは大前提なんだけど」
トモちゃん「自分の店で自分が好きな人のライヴをやれるのは、本当に嬉しいっすよ。ニューエスト・モデルやソウル・フラワー・ユニオンと、さんざん聴いて育ってきた俺の目の前に本人が現れて、こうして繋がっていって」
——私もソウル・フラワーみちのく旅団に同行させてもらってトモちゃんと出会って、今、こうしてGo!ちゃんと繋がってるの凄く嬉しい。
トモちゃん「余談なんですけど、初めて中川さんが来てくれて、その後、中川さんとメールでやり取りした時、俺、『今までで一応嬉しかったです』ってメールしてたんですよ。『一番嬉しかったです』って書いたつもりで(笑)。後で気づいて(笑)」
Go!「うははは。一応(笑)」
トモちゃん「でね、月と昴を手伝ってくるてるエリちゃんは、車の中でずっとJUNIOR三昧ですよ。毎日JUNIORかけてる。365日超えてますからね(笑)。俺も歌ってますもん」
Go!「俺、最初はJUNIORやってるけど、それを前に出すのはどうかな?って思ってて。そしたらトモちゃんはいっつも店でJUNORのCDやDVDを流してくれて、『じわじわきてますよー、JUNIOR』って連絡くれて。なんていうか、やろうと思ってやった売名じゃなくて、普通に拡がっていくなら凄く嬉しいことだなって」
トモちゃん「だから委託販売やろうかなって思ってて。ここでライヴやったミュージシャンのことを聞いてくるお客さんがたまにいるのよ。『「満月の夕」が入ってるCDありますか?』とか。そういうの逃したくないんですよ。商売としても逃したくないし、その人の思いも逃したくない。何よりそういう会話が好きなんですよね。『どこで知ったんですか?ソウル・フラワー・ユニオン好きなんですか?他にどんなバンド好き?』っていう会話が」
Go!「それで、『このバンドなら今度ここでライヴやるんだよ』ってなったら最高だよね」

「落ち着いたら兄ちゃん達の音楽聞かせてくれよな!」って言ってくれて。それからっすね、俺はいつかここに音楽を演奏しに来たいなって思って。

——話は変わるけど、Go!ちゃんは震災以降、変わりましたよね。
Go!「うん。なにか自分の中でも変わったって思ってます。震災直後、10日位たった時かな?べー師匠(踊ろうマチルダ)が『ツアーで震災が起きた地域をよく通るから、物資を持っていこうと思うんだけど、Go!さんどう思います?』って相談してくれて。俺はその時はまさか自分が現地に行くとは考えてなくて。それじゃぁ俺は東京で必要な物を集めるから、ベー師匠はそれを渡す…っていう『マチルダ運輸』(笑)が結成されたんです。震災のニュースを見てこれはただ事じゃないし、なんかしなきゃって思ったけど、自分が直接行くとは、その時は考えが及ばなかった。で、バンド界隈で物資を募ったらスゲェ集まったの。東京のバンド仲間やいつも遊んでる仲間が仕分け作業をして、それをベー師匠に預けるつもりが凄い量があるから俺もハイエース借りて一緒に行く事になって。初めて南三陸町に行った時は入谷小学校とその周辺の避難所に渡してすぐに帰ったの。それで、次にべー師匠と二回目に行った時かな。歌津地区・馬場中山の避難所に行ったらちょうど夕飯時で、その日の捜索活動や撤去作業を終えた男性チームが支援物資のお酒で晩酌タイムだったんです(笑)。俺も一緒に飲みたかったんだけど(笑)、そこは絶対飲んだらいけないなって思ってて。まだ一カ月も経ってなくて電気も水道も通ってないそんな状況下だし、避難所のすぐ下には流されてる家が何棟もあるっていうね…。そしたら漁師のおじさんが『一緒に飲むのもボランティアだぞ!飲めっ!』て(笑)。その避難所が凄くいい雰囲気で。避難所の皆さんの役割分担がしっかりしてて、皆さん明るく接してくれて…。不謹慎だけどスゲェ楽しかったんですよ。その時に、『兄ちゃん達は音楽やってんのか?』とか聞かれて。そこからみんなで自分たちのCDを聞いたり、震災後の色々な話をしたり。そしたら一人の漁師さんが『落ち着いたら兄ちゃん達の音楽聞かせてくれよな!』って言ってくれて。それからっすね、俺はいつかここに音楽を演奏しに来たいなって思って。そこから自分の中でなんか変わった。スイッチが入りました。それで俺はこの街を応援しようって。被災したいろんな場所があるけど…、宮古とか女川とか各地に行ってるバンドマンもいるから、俺は南三陸町担当になろう!って勝手に思っちゃったんですよねー」
——人と会って話したってことが大きかったんだね。
Go!「そう。俺、その時、飲み過ぎて歩けなくなっちゃって(苦笑)。自衛隊の宿泊テントまで担がれるように連れてってもらって。迷惑な存在っすよね(笑)。で、朝起きて挨拶しに行ったら、女性陣がドラム缶で沸かしたお湯をタオルで濡らして『これで顔を洗ってね』とか、昨日一緒に飲んでた男性陣に『食堂に来い!朝飯喰うぞ!』って自衛隊が用意してくれた朝飯をみんなで一緒に食べて。本当に凄い良くしてくれて。だから正直、その避難所に行ってなかったらここまで南三陸に関わってなかったかもしれないな…」

パンクかじってる人は、世の中がちょっとおかしなことになってるなってすぐに気づくんですよね。だから一番優しかった。

——この人のために何かやりたい、この街のために何かやりたいって思える出会いは大きいよね。
Go!「人ってそうやって繋がっていくんだろうし。来るたびに楽しいよね。街の変化を見るのも。この道は開通してこうなったのかって」
トモちゃん「でも最初は凄かったですよ。震災後っていうのは何かを失った悲壮感を全開に出してたから、全員。俺はあんまり出さないほうだと思うけど。俺が悲壮感出しても太ってるから説得力ないし(笑)。東京とかからライヴに来てくれても、金取る(有料)のかって言うのもいて。逆に金置いてけってのもあった。何様だよって俺は思ったよ。Tシャツだけもらいに来たりとか。来てくれた人に対してそんな態度で。俺、屈辱だったよ。俺は音楽が好きだから余計そう思うのかもしれないけど。そういう人の態度に、俺が屈辱を感じた」
——うん…。でも私が被災したらトモちゃんみたいになれず、被害者意識は絶対に持つだろうし支援に来るのが当然だろって思うかもしれない。そう考えると震災から時間が経ったとはいえ、トモちゃんとGo!ちゃんのような関係だったり、今回の有料のライヴのやり方だったりにしていったのは、ホントは難しいことかもね。
Go!「難しいし時間かかったっすよね。俺も応援って気持ちは今も勿論あるし心の真ん中を通ってるものだけど、でもそれが『してあげる』って気持ちになったら違うなって思って。思ってたんだけど、でも『してあげる』って意識はどっかにあったかもしれなくて…。それがトモちゃんとか、ホープフェスを一緒にやってるデイジーちゃんやサトシくん(※2)っていう友達に出会ってどんどん溶けていって。友達に会いに行くって本当に思えて」
トモちゃん「Go!さんは、俺の怒りとかそういうのを笑顔に変えてくれる雰囲気を出してるからね。やっぱりね、パッと見、怖い人が一番優しい。Go!さんもそう。パンクかじってる人って優しいですよ。震災が起きて感じたのは、世の中からふざけてるとか怖く見られがちな人ほど思いやりがあるというか、まずは耳を傾けてくれる。さすがミュージシャンは耳がいいなぁと思いました。だってパンクかじってる人は、世の中がちょっとおかしなことになってるなってすぐに気づくんですよね。だから一番優しかったです」
——いろんな人が支援や報道で来る中で、それは肌で感じたことなんだね。
トモちゃん「そうですね。俺、いろんなテレビとかに出させてもらったりインタビューされましたが、最初にも言ったけど、取材しに来る人の、『こういう報告をしたい』っていうエゴみたいなものを感じて。ヤラセってまでは言わないけど、こういう風に伝えたいってのが入り過ぎていて、俺が何を伝えたいかとかはあまり関係なく、テレビ局の都合が本当にたくさんあったんです。バラエティとかお笑い芸人はその逆で、俺への気遣いだったりもあって。テレビでは一見ふざけてるようにしてる人達こそ、とても優しく思いやりがあった。まちゃまちゃさんなんか本当に」
——まちゃまちゃさん、ハマーレ歌津しろうお祭りで洋服屋さんの人に、「何度も来ていただいて」って言われてましたもんね。
トモちゃん「ホント、優しいです。だからこう、震災で、白い目で見られがちな人ほど、白い目でっていうのは失礼だけど(笑)、ちょっと世間から外れちゃってる人達ほど本質を見抜く耳というか、こっちの話を聞く耳を持っている。自分を押し付けるんじゃなく他人の気持ちありきなんだなって、とてもとても思った。で、俺、今も思うんですけど、緊急事態が起きた時、思想的なことなんかより先に、そんなの超えて、世の中がおかしいぞって感じ取れるかな?って。感じ取ってすぐに行動できっかな?って。それは日々思ってますよ。逆の立場だったら、俺はミュージシャンじゃないけど、Go!さんや俺が好きなミュージシャンみたいに動けるかな?って」
Go!「俺が逆の立場ならトモちゃんみたいにやれるかな?って思うよ」
——トモちゃんは、Go!ちゃんやいろんな人と繋がりながら、こう、自立している感じがあるもんね。
Go!「俺、地元が茨城で、田舎にいた時もそうだったけど、音楽が好きな人ややりたい人はいっぱいいて。やればいいのにって思うのね。俺は仕事しながらもバンド中心で暮らしてるから言えるのかもしれないし、そうもいかねぇだろうなってのもわかるけど。でもギター弾きたきゃ弾けばいいじゃんって思うことのほうがデカくて。なんか我慢しなきゃないことあんの?って。もっと言えば、被災したから我慢してるの?って。でも、もしどうしても我慢しなきゃなんないのなら、だったら余計、ここは、月と昴は、被災地だからとかあんまり関係ない場所でいいんじゃないか?って。俺らが東京でやってることを、いつも遊んでることを、ここでもできたらな…って思ってるかな。そしたら若い人とかも音楽に興味持って、世代交代していって…っていう、音楽に関してだけだけどそんな理想的な事が生まれるんじゃないかなぁ~とか思ったり」
——昨日のライヴで、私も「いいライヴやる店だから、みんな遊びにおいでよ」って、普通に思った。なんか、当たり前の音楽とお客さんの在り方になってる感じがして。
Go!「そうそう。『さんさん商店街のカレー屋さん、たまにライヴやってるらしいよ!』って噂になって。そしたら音楽好きな人は調べるだろうし。だから俺は良いミュージシャンや仲間を送り込む。自分も一緒に来たいし(笑)。ミュージシャンも南三陸町をツアー中の予定の一本に入れられるようになったら最高だなぁ…」
トモちゃん「この店に来ればCDも置いててBollocksも置いててっていう。だから委託販売やりましょうよ」
——CDは仙台のタワレコまで行かなきゃないんだよね。
トモちゃん「そうなんですよ。だから何事もさ、繋げるためなんですよね。次に繋げるためだし人が繋がるための」
——いいねー。動いている感じがするねー。
トモちゃん「なんかね、ここでカルチャーが生まれてるなって、そう思いました。昨日のライヴで」
Go!「うん。俺もそう思った!よしっ!次の日程決めよーぜー!」

※1
南三陸HOPE FESTIVAL。2012年から南三陸町の音楽好き有志で始まった野外フェス。2013年から東北援護射撃チーム『烏合の衆』とステージ設営のプロフェッショナル『シミズオクト』も加わり南三陸町のバンドに加えて全国のライブハウスで活躍中のバンド、さらに地元のお祭り(福幸市)とも共同開催し既存のロックフェスよりも地元密着型・お祭り感を前面に出したフェス。

※2
デイジーちゃん・サトシくんとは震災の年2011年に『海神祭』という南三陸町の復興イベントに初めてJUNIORを呼んでくれた2人。ホープフェス実行委員として一緒にフェスを開催し、当時からお世話になってる音楽大好きな2人。